スプリットトンネル(スプリットトンネリング)は、指定したアプリやサイトだけVPNを通し、残りは普段の回線で通信させるVPNの機能です。海外から日本の動画だけVPNで見て現地の銀行アプリは素の回線に残す、といった使い分けができ、この記事ではExpressVPN・NordVPN・Surfshark・MillenVPNでの設定方法と対応OS、iPhoneで使えないときの代わりの運用を解説します。
| VPN | Windows | Mac | Android | iPhone | 指定できる単位 |
|---|---|---|---|---|---|
| ExpressVPN | ○ | ○ | ○ | △(IPアドレスのみ) | アプリ/IPアドレス |
| NordVPN | ○ | × | ○ | × | アプリ |
| Surfshark(Bypasser) | ○ | ○ | ○ | △(サイトのみ) | アプリ/サイト/IPアドレス |
| MillenVPN | ○ | 記載なし | 記載なし | 記載なし | アプリ/ドメイン |
(各社の公式ヘルプをもとに作成。出典は本文の各節に記載)
4社の中でいちばん細かく設定できるのはExpressVPNとSurfsharkVPN
で、iPhoneで使いたい場合もこの2社が候補になります。
スプリットトンネル(スプリットトンネリング)とは
スプリットトンネルは、通信を「VPNを通す分」と「通さない分」に分ける機能です。
「スプリットトンネリング」と「スプリットトンネル」は同じ機能の呼び方の違いで、VPNアプリの画面ではどちらの表記も使われています。
普通にVPNをオンにすると、端末のすべての通信がVPNのトンネルを通ります(フルトンネル)。
スプリットトンネルでは、指定したアプリやサイトだけがトンネルを通り、残りは普段どおりの回線でそのまま出ていきます。
| フルトンネル(通常のVPN) | スプリットトンネル | |
|---|---|---|
| VPNを通る通信 | すべて | 指定したアプリ・サイトだけ |
| 接続先から見えるIP | すべてVPNサーバーの国 | VPNを通す分だけVPNの国、残りは本当の場所 |
| 速度 | すべての通信がVPNの帯域を使う | VPNを通す通信が減る分、動画などに帯域を回せる |
| 現地の銀行・配達アプリ | 海外IPとして弾かれることがある | VPNから外せば普段どおり使える |
| 安全性 | すべて暗号化 | VPNから外した通信は暗号化されない |
「除外」方式と「許可」方式の2つがある
スプリットトンネルの線の引き方は2通り。
- 除外方式:基本はすべてVPNを通し、指定したアプリだけVPNから外す(ExpressVPNの「Bypass VPN」、Surfsharkの「Bypass VPN」)
- 許可方式:基本は素の回線で、指定したアプリだけVPNを通す(ExpressVPNの「Only VPN」、Surfsharkの「Route via VPN」)
どちらを選ぶかは、普段の通信の大半をVPNに通したいかどうかで決まります。
海外在住で日本の動画やサイトを見る時間が長い人は除外方式にして、現地の銀行や配達アプリだけを外すのが向いています。
日本在住で普段はVPNを使わず、海外の動画サービスを見るときだけ使う人は許可方式で、その動画アプリだけをVPNに通します。
アプリ単位とサイト単位
何を指定できるかも、OSとVPN次第です。
WindowsとAndroidでは「アプリ単位」が基本で、Chromeだけ、TVerアプリだけ、という指定ができます。
iPhoneはOSの制約でアプリ単位の振り分けができないため、対応しているVPNでも「サイト(IPアドレスやドメイン)単位」止まりです。
MillenVPNのように、Windowsでアプリとドメインの両方を指定できるものもあります。
スプリットトンネルが役立つ4つの場面
海外から日本の動画を見ながら、現地の銀行・配達アプリも使う
当サイトの読者にいちばん多いのがこの使い方です。
VPNで日本サーバーに繋いだままだと、現地の銀行アプリ、フードデリバリー、配車アプリが「国外からのアクセス」として弾いたり、配達先の位置がずれたりします。
そのたびにVPNをオフにして、終わったらオンに戻すのは手間で、戻し忘れて日本のサービスに海外IPで入ってしまう事故のもとです。
除外方式で現地のアプリだけVPNから外しておけば、VPNは日本の動画用に繋ぎっぱなしで済みます。
VPN常時オンのまま、ネットバンキングや決済アプリだけ素の回線にする
日本国内でVPNを常時オンにしている人も、事情は同じです。
銀行やコード決済のアプリは、VPNのIPアドレスからのログインを不審なアクセスとして扱い、追加認証を求めたりログインを止めたりすることがあります。
金融系のアプリだけ除外に入れておけば、VPNをオフにする場面がなくなります。
もっと詳しく:VPNをオフにするとどうなる?【常時接続の必要性は?】
動画アプリだけ通して速度を確保する
VPNの速度を決めるのは、トンネルを通る通信の合計です。
裏で動くOSの更新、クラウドの同期、写真のバックアップまでVPNを通していると、動画に回る帯域がその分だけ減ります。
許可方式で動画アプリだけをVPNに通せば、他の通信はVPNの外で勝手に流れ、動画が止まりにくくなるという理屈です。
もっと詳しく:VPN接続で通信速度が遅い7つの原因【対策も解説】
自宅のプリンタ・NAS・Chromecastと同時に使う
VPNをオンにすると、同じWi-Fiにあるプリンタ、NAS、Chromecast、スマートスピーカーが見つからなくなることがあります。
通信がすべてVPNのトンネルに入り、家の中のネットワークに出ていかなくなるためです。
これはスプリットトンネルよりも、各社アプリにある「ローカルネットワークへのアクセスを許可」のような設定で解決する方が簡単です。
MillenVPNの場合は、この「接続時にローカルネットワークを許可する」設定がスプリットトンネルを使うための前提条件にもなっています。
使えるVPNと対応OS一覧
冒頭の表を、方式と単位まで含めてまとめ直したものです。
| VPN | 対応OS | 方式 | 単位 |
|---|---|---|---|
| ExpressVPN | Windows、Mac(macOS 11以降)、Android(7.0以降)、Linux、ルーター。iPhoneはiOS 15以降 | 除外(Bypass VPN)/許可(Only VPN) | アプリ。iPhoneはIPv4アドレスのみ |
| NordVPN | Windows、Android、Android TV。Linuxは許可リスト | 除外/許可 | アプリ。Linuxはポートとサブネット |
| Surfshark(Bypasser) | Windows、Mac、Android、iPhone | 除外(Bypass VPN)/許可(Route via VPN) | アプリ、サイト、IPアドレス。iPhoneはサイトのみ |
| MillenVPN | Windows(他のOSは公式ヘルプに記載なし) | 除外 | アプリ、ドメイン |
(出典:ExpressVPN サポート・How to Use the Split Tunneling Feature/同・How to use split tunneling on iOS/NordVPN サポート・スプリットトンネリングの概要と使い方/Surfshark サポート・How to use Surfshark Bypasser on Windows/同・How to use Bypasser for iOS/MillenVPN ヘルプセンター・Windowsアプリの使い方)
NordVPNはMacとiPhoneで使えない点、MillenVPNはWindows以外の記載が無い点が、選ぶときの分かれ目です。
設定方法【VPN別】
4社とも、設定を変えたあとはVPNに繋ぎ直すと反映される仕組みです。
ExpressVPNのスプリットトンネリング設定
WindowsとMacは、アプリの「プロフィール」タブから「スプリットトンネリング」を開きます。
「Bypass VPN(選んだアプリはVPNを使わない)」か「Only VPN(選んだアプリだけVPNを使う)」を選び、アプリを追加します。
Macでは初回に「システム設定」→「一般」→「ログイン項目と機能拡張」→「ネットワーク機能拡張」で「ExpressVPN Split Tunnel」を許可する必要があります。
プロトコルにWireGuardを使っているときは、設定を変えたあとに一度切断して繋ぎ直さないと反映されません。
iPhoneは「設定」→「プロフィール」から、VPNを通さないIPv4アドレスを1つずつ追加します。
ドメイン名やURLは入れられず、公式ヘルプも「大きなサイトは固定のIPアドレスを持たないので確実には動かない」と書いているので、iPhoneでの除外は限定的です。
iPhoneでスプリットトンネルを使うときは、キルスイッチを「Advanced」ではなく標準にしておく必要もあります。
もっと詳しく:ExpressVPNの使い方
NordVPNのスプリットトンネリング設定
Windowsは、左下の設定(歯車)→「スプリットトンネリング」をオンにして「アプリを追加」から選びます。
Androidは、プロフィール→設定→「VPN接続」→「スプリットトンネリング」をオンにして、VPNから外すアプリを選びます。
Android TVも同じ設定があり、「VPNから除外」と「VPN経由」の2列にアプリを振り分ける形です。
MacとiPhoneのアプリにはこの機能が無いので、Apple製品が中心の人はExpressVPNかSurfsharkを選んでください。
もっと詳しく:NordVPNの使い方
SurfsharkのBypasser設定
Surfsharkでの呼び名は「Bypasser(バイパサー)」です。
WindowsとMacは「設定」→「VPN設定」→「Bypasser」で、「Bypass VPN」か「Route via VPN」をオンにして、アプリかサイトを追加します。
Windowsではアプリの一覧に無いソフトも、「Add apps」から実行ファイルを指定して追加できます。
Androidは下の「設定」→「VPN設定」→「Bypasser」です。
iPhoneは「設定」→「VPN設定」→「Bypasser」→「Add website」で、VPNを通さないサイトのアドレスを入れます(アプリの指定は不可)。
4社の中で、サイト単位の指定をiPhoneでも普通のアドレスで入れられるのはSurfsharkVPN
だけです。
もっと詳しく:Surfsharkの使い方
MillenVPNのスプリットトンネル設定
Windowsアプリの「設定」→「スプリットトンネル」タブで、「手動選択」からVPNを通さないアプリとドメインを指定します。
ドメインで指定できるので、instagram.comのようにサイト名で外せるのが特徴です。
公式ヘルプによると、「接続」タブの「接続時にローカルネットワークインターフェースを許可する」にチェックを入れておくことと、設定はVPNを切断した状態で行うことが条件です。
Mac・Android・iPhoneのアプリについては、公式ヘルプにスプリットトンネルの記載がありません(2026年9月時点)。
もっと詳しく:MillenVPNの使い方
iPhoneでスプリットトンネルが使えないときの代わり
iPhoneでは、どのVPNでもアプリ単位のスプリットトンネルは使えません。
iOSがVPNアプリにアプリごとの振り分けを許していないためで、VPN側の機能不足ではありません。
代わりの運用は3つあります。
- サイト単位で外す:SurfsharkのBypasserにサイトのアドレスを、ExpressVPNにIPv4アドレスを登録する。ブラウザで使うサイトには効くが、銀行アプリのように通信先が複数あるアプリには効きにくい
- 手動でオフ→用事→オン:銀行アプリを使うときだけVPNをオフにし、終わったらオンに戻す。VPNアプリの「自動接続」を入れておくと戻し忘れが減る
- 端末を分ける:日本の動画はiPhoneでVPNをオンにしたまま、現地の銀行や配達はAndroidやパソコンで。2台持ちの人には結局これがいちばん楽
手動でオフにしている間は、素のIPアドレスで通信している状態です。
その間に日本限定のアプリを開くと海外扱いになるので、用事が済んだら先にVPNを戻してから他のアプリに移ってください。
もっと詳しく:VPNが繋がらない・すぐ切れるときの直し方(iPhoneで勝手に切れるときの設定)
使うときの注意点
日本限定のサービスは必ずVPN側に残す
除外に入れたアプリは、接続先から見ると海外からのアクセスになります。
TVer、NHK ONE、ラクマ、ゲームアプリのように日本国内限定のサービスをうっかり除外に入れると、「お住まいの地域では利用できません」で止まってしまうわけです。
NordVPNの公式ヘルプも、スプリットトンネル使用中は名前解決に使うIPアドレスと実際の通信のIPアドレスが食い違い、動画サービスの地域判定に失敗することがあると注意しています。
動画サービスがVPN経由なのに地域エラーを出すときは、いったんスプリットトンネルをオフにして切り分けてください。
もっと詳しく:TVerを海外から見る方法【見れない理由・VPNで通信エラー解決】
除外したアプリの通信は暗号化されない
VPNから外した通信は、VPNを使っていないときと同じ素の通信です。
ホテルや空港のWi-Fiでは、除外するアプリを本当に必要なものだけに絞ってください。
ExpressVPNの公式ヘルプも、SNSのような共有のIPアドレスを除外に入れると、無関係なサイトにデータが渡る恐れがあると注意しています。
もっと詳しく:公共のフリーWi-Fiを安全に使う方法
スプリットトンネルとキルスイッチの関係
キルスイッチは、VPNが切れた瞬間に通信を止めて素のIPアドレスが漏れるのを防ぐ機能です。
スプリットトンネルで除外したアプリはもともとVPNを通っていないので、キルスイッチが働いても止まらない、という設計が一般的です。
ExpressVPNのiPhone版のように、キルスイッチの強い設定がスプリットトンネルの設定を上書きする例もあるので、両方を使うときは各社のヘルプで組み合わせを確認してください。
もっと詳しく:VPNのキルスイッチとは【キルスイッチの使い方】
FAQ:よくある質問
VPNは常にオンにした方がいいですか?
海外から日本のサービスを使う人は、オンのままにしておく方が事故が少ないです。
現地のアプリが弾かれる問題は、VPNを切るのではなくスプリットトンネルの除外で解決します。
もっと詳しく:VPNをオフにするとどうなる?
VPNの接続先はバレますか?
VPNを通した通信の接続先は、VPNサーバーの国から来たように見えます。
スプリットトンネルで除外したアプリには本当のIPアドレスが見えるので、隠したい通信は除外に入れないでください。
スプリットトンネルを使うと速度は上がりますか?
VPNを通す通信が減る分だけ、VPN側の帯域に余裕ができます。
ただし動画そのものの速度はサーバーの距離と混雑で決まるので、遅いときはまずサーバーとプロトコルを見直してください。
もっと詳しく:VPN接続で通信速度が遅い7つの原因
iPhoneでアプリ単位のスプリットトンネルはできますか?
できません。
iOSの制約なので、どのVPNでも同じです。サイト単位の除外か、手動でのオン・オフか、端末を分ける運用で代用します。
どのVPNがいちばん細かく設定できますか?
アプリ・サイト・IPアドレスの3つを指定でき、iPhoneでもサイト単位が使えるSurfsharkと、Mac・Linux・ルーターまで対応するExpressVPNです。
料金やサーバー数も含めて比べるなら、VPNサービス比較ツールを使ってください。
まとめ
- 普段の通信の大半をVPNに通すなら「除外」、動画のときだけなら「許可」
- アプリ単位はWindowsとAndroid。iPhoneはサイト単位か手動運用
- Apple製品中心ならExpressVPNかSurfshark。NordVPNはWindows・Android向け
- 日本限定のサービスは必ずVPN側に残す。除外した通信は暗号化されない
海外から日本の動画を見ながら現地のアプリも普通に使いたい人には、当サイトではExpressVPNをおすすめしています。
